遺伝子分析・受託研究のNDTS - マイコプラズマ BRDC BVD 牛白血病 リンパ腫 ヨーネ MIC アミノ酸 生体アミン 薬剤感受性 薬剤耐性 抗菌活性 リアルタイムPCR qPCR LC/MS/MS

column

「獣医学つれづれ草」 第9話 EUにおける動物薬規制強化の対象抗菌薬 田村 豊 先生

EUにおける動物薬規制強化の対象抗菌薬

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

2022年1月2日に公開した第5回のコラムで、EUが動物用医薬品の強化策を公表したことをお知らせしました。日本に関連する法令の内、「人体用抗菌剤の指定基準」は最終版の法令が公表されており、「人体用に使用が制限される抗菌剤を指定する規則」のドラフトが公開されました。また、「EUに輸入される動物または動物由来製品に関する詳細な規則」は未公開のままで、いずれも2022年度中に最終版が公表される見込みです。

今回公表された「人体用に使用が制限される抗菌剤を指定する規則案」では、特定のヒトの感染症治療のために確保される抗菌剤または抗菌剤群は、動物用医薬品または飼料に添加して使用してはならないとされ、人用医薬品の動物への使用は禁止されます。図1に「人体用に使用が制限される抗菌剤を指定する規則案」に記載されている抗菌剤のリストを示します。この内、日本で動物用医薬品として承認のあるのは、ホスホン酸誘導体に該当するホスホマイシンだけでした。本剤は牛のパスツレラ性肺炎、大腸菌性下痢症、サルモネラ症の治療に用いられており、2020年度においてホスホマイシンカルシウム水和物で115.9㎏、ホスホマイシンナトリウムで74.7kgと牛の使用量は少ないもの、問題のある感染症の治療薬の選択肢を確保する上で重要な抗菌薬であるといえます。

以上のように現時点で承認のある動物用医薬品として影響を受けそうなのはホスホマイシンだけでしたが、リストアップされている抗菌薬が今後、日本で開発されることも考えられます。また、当初から抗菌性飼料添加物を使用した家畜の輸入は禁止されることを考えると、EUの規制強化策が我が国の畜産に及ぼす影響は大きいものであり、今後もEUの動向に注視する必要があります。

1)農林水産省:「人体用に使用が制限される抗菌剤を指定する規則」の制定について

eu_amr-13.pdf (maff.go.jp)

図1.人体用に使用が制限される抗菌剤を指定する規則案」に記載されている抗菌剤のリスト

NEW