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「獣医学つれづれ草」 第15話 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)に基づくAMR対策の推進 田村 豊 先生

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)に基づくAMR対策の推進

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

 

 本年4月に、新たに「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)」(新アクションプラン)が公表されたことを、前回のコラムでお知らせしたとおりです(https://www.ndts.co.jp/5204.html)。今般、新アクションプランの実効性のある取組の一層の強化を求めて、農林水産省消費・安全局長通知である「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)の策定に基づく薬剤耐性対策の推進について」2)が発出されました。そこで今回は通知内容の概要について紹介したいと思います。なお、本通知には、これまでの取組みや成果指標の達成状況、そして新アクションプランでの取組と成果指標についても言及されていますので、ご一読をお勧めいたします。

 通知文では薬剤耐性対策の推進強化についての対応方針の主な内容を、家畜・家きん分野、養殖水産分野、愛玩動物分野の皆様に対して周知徹底させることになっています。

1. 家畜・家きん分野

<家畜・家きんの飼育者>

  • 感染症の発生を予防することにより抗菌剤の使用機会を減らすため、飼養衛生管理基準を遵守すること
  • 獣医師が抗菌剤を使用した時は、投薬履歴を帳簿に記載して少なくとも3年間は保存すること。記載内容は動物用抗菌剤の名称、用法及び用量、使用年月日、場所、動物の種類、頭羽数、出荷制限期間などです。
  • 用法・用量、休薬期間などの取り扱い上の注意事項に関する獣医師の指示に従い、定期的に指示内容を確認すること
  • 農場従事者が自らの健康管理に留意し、手洗い及び消毒を徹底すること
  • 抗菌剤の廃棄に当たっては、獣医師の指示に従うこと

<獣医師>

  • 農場の飼養衛生管理の水準の向上を図るため、感染症の発生を予防すること
  • 薬剤感受性試験を実施し、適切な抗菌剤を選択するとともに、治療効果を見極めて変更の必要性を判断すること
  • 抗菌剤の予防的投与は極力避けること
  • 指示書の発行にあたっては、出荷制限期間を家畜・家きん飼育者に明確に指示し、発行した指示書に有効な期間を明示すること
  • 獣医師が使用した抗菌剤について、農場の帳簿への記載を徹底すること

 

2. 養殖水産分野

獣医師及び養殖業者は、引き続き「水産用医薬品の使用に関する記録及び水産用抗菌剤の取り扱いについて」2)を遵守すること

 

3. 愛玩動物分野

<獣医師>

  • ヒトと愛玩動物との間における薬剤耐性菌の相互伝播リスクを低減するために、必要に応じて、原因病原体、感染状況などを的確に把握し、治療方針を決定すること
  • 愛玩動物用の抗菌剤として承認されたものを優先的に使用し、ヒト用の抗菌剤や国内未承認医薬品の使用は極力避けること
  • フルオロキノロン系、第三世代セファロスポリン系などヒトの医療上重要な抗菌剤*は、薬剤感受性試験の結果などを受け、第一次選択薬が無効な場合にのみ使用すること
  • 愛玩動物の飼育者に抗菌剤を処方する場合は、用法・用量など取扱い上の注意事項に関する必要な事項を確実に指示し、適正に使用させること

<愛玩動物の飼養者>

  • 抗菌剤の特性やリスクについての情報を獣医師から受け、獣医師から指示された用法・用量、使用上の注意などに従って適切に使用すること
  • 抗菌剤の投与を受けた治療中の愛玩動物の糞便、尿、唾液、粘膜、傷口などに接触した場合には、薬剤耐性菌の感染リスクを鑑み、より一層手洗いの励行などに務めること

*著者注:愛玩動物における第二次選択薬の定義は明確にされていません。一般には、フルオロキノロン系、第三世代セファロスポリン系、カルバペネム系、グリコペプチド系などの医療上重要な抗菌剤を指します。なお、EUでは2023年2月からカルバペネム系、グリコペプチド系などの抗菌剤の愛玩動物を含む動物への使用が禁止されています。

引用文献

1) 農林水産省諸費・安全局長:薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)の策定に基づく薬剤耐性対策の推進について.5消安第827号(令和5年5月31日).https://www.maff.go.jp/nval/hourei_tuuti/pdf/R50531_5-827.pdf

2)農林水産省消費・安全局長:水産用医薬品の使用に関する記録及び水産用抗菌剤の取り扱いについて.28消安第5781号(平成29年4月3日).

https://www.maff.go.jp/j/syouan/suisan/suisan_yobo/attach/pdf/fishmed-22.pdf

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